本研究は、「市場経済と資本主義:その原理と現代的変異性」をテーマとし、4年間にわたる予定をたてており、本年度はその初年度にあたる。 当初の計画に沿って、本年度はパーソナルコンピューター関連のソフト、プリンター、備品を整備し、検討を要する文献・資料の調査をすすめるとともに、主として市場経済と資本主義の原理をめぐる方法論の再考をおこなった。その研究成果は、『国学院経済学』第50巻3/4号(2002年9月)、および同誌第51巻1号(2003年1月)に公刊された論文「マルクスにおける経済学の方法論をめぐって」、ならびに「経済原論の課題と方法-宇野『原論』の「序論」をめぐって-」にひとまずとりまとめられた。それらをつうじ、市場経済と資本主義の原理の解明には、ひとつには人類史的な広い観点が求められるところがあることがあらためて確かめられた。これと平行して、市場経済と社会主義の理論と現実をめぐり、中国での実験についても検討をすすめ、論文「社会主義市場経済の理論的可能性と中国の進路」を執筆した。この論文は『東京経大学会誌』に掲載を予定されている。 本年度の初頭4月末には、北京の人民大学で開催された国際会議「社会主義政治経済学、現代世界資本主義」に出席し、この論文の草稿を報告し、有益なコメントをえることができた。あわせて、本研究の事実上の協力者のC・ラパヴィツァス博士(ロンドン大学)をはじめ有力な理論家と本研究全体にわたり意見を交わすことができ、今後の研究に役立つ示唆をえた。ラパヴィツァス博士には日本語でまとめた論文は送り、また彼の準備している単著の草稿を検討しコメントを送り、協力をすすめている。また、本研究のテーマに関心の深い日本の専門研究者たちとの研究会も8回開催し、本研究の進行に多大な協力をえている。こうして本年度の本研究はほぼ順調に伸展したと考えている。
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