研究概要 |
2年にわたる本研究の目的は,計画経済から市場経済へ移行する国に対する技術移転がいかなる問題に直面するかを経済学的アプローチで分析し,その問題を克服する可能性を探ることである。その目的を達成するために,技術移転の関係主体の行動仮説を吟味し,分析枠組みを構築した上,1988年から2002年までのベトナムの事例を検証する。研究1年目の本年度には暫定的分析枠組みを作った上,現地調査の詳細な計画を作成し,現地の協力者を探して一部の基礎調査を委託した。 技術移転の関係主体は多国籍企業と現地政府及び現地企業である。市場経済への移行過程に現地政府の政策が決定的であるが,社会主義的体制が支配した時代に多国籍企業への警戒が根強かったので外国企業の活動に対して様々な規制を講じるし,現地企業の大部分が国営企業であるので多国籍企業との合弁相手も主として国営企業である。しかし,これらの企業に企業家精神の欠如と官僚主義が支配的であるので多国籍企業の技術移転も消極的であると考えられる。技術移転が成功するためには民営化など国営企業の抜本的改革と民間企業の大量創出が必要である。そのような段階になって初めて多国籍企業の技術移転が効率的になると考えられる。これが暫定的作業仮説である。 本年度に現地調査の第1段階として現地協力者にベトナムの外資導入が開始した1988年から直近の2002年末までの外国投資案件(製造業のみ)を収集し,各案件に関する詳細な情報(出資比率,操業時期,操業内容,生産・販売の実績,経営者構成など)をまとめてもらった。現在取りまとめる段階であるが,数千件に上ることになっている。これを分析した結果を踏まえて40件程度の代表的案件に直接インタービューを行うつもりである。
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