移行経済の3軸理論の研究は第2年目になり、第1の軸である国家機能の役割に関する海外の文献を読みこんだ。第2軸である国際地域統合が移行経済のタイプ化に与える影響についてはかなりの検討を進めてきている。その影響を「システム・レジームの競争的選択者の相互取り込み」として理解することができた。このような視角の確立はEUの東欧拡大と東欧のEU加盟についての理論的、実証的研究に新しい地平線を構築することになった。その成果の一部はすでに昨年の国際経済学会での報告に結実したが、今年度はさらに日本EU学会でも「共通論題報告」を行うことができた。その一部はミネルヴァ書房から刊行予定の『ロシア東欧経済』所収論文「東欧のEU加盟」に結実している。また、3軸理論をベースにしながら論文「経済システムの比較と移行経済」(角田修一編『社会経済学入門』大月書店)を発表した。ここでは、第3の軸、自由化の程度を放棄して、社会の経路依存性を新しい軸に据える試みを行っている。これまでのこの分野の研究成果は本年度完成する予定の学位請求論文に盛り込まれる予定である。
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