研究概要 |
本研究は、日本のIT産業の比較優位・劣位を規定していると考えられる「日本型企業活動」の特色、とりわけそこで使用される「情報手段」に注目して、現在は比較劣位にある部門が比較優位を得るための政策手段を見出だすことを目的とする。直接的には、下記の仮説の検証を進めた:『日本のIT産業は、「深く密接な協力(deep coordination, DC)」が重要な役を果たす電子部品・装置や、小型・コンパクトな一体型製品で比較優位を持っているが、他方、「開かれた広範囲の協業(wide coordination, WC)」が必要となる組立型製品、ソフトウエア、ネットワーク・サービスなどで比較劣位に甘んじている。その原因の1つは、日本型の企業活動において、WCの必須要件である「文書型情報手段」の使用が、(たとえば米国と比べて)格段に低水準に留まっていることにある。』 1.文献資料(二次資料)の収集・分析 企業活動のうちWCと直接にかかわる文書型情報は、企業秘密のために直接に入手できない。これを克服するため、(主として学術的な)調査資料から、本研究の目的に適合する部分を抽出した。本研究と同一、あるいは類似の目的で実施された調査はきわめて少ないので、他の目的のためになされた調査から、その副産物として、企業活動における「文書型情報」がどの程度使用されているか、を示す情報の入手を試みた。 2.周辺資料の収集・分析 企業活動のWCにかかる直接的資料が入手困難である場合でも、そのための周辺資料で容易に入手できるものがある。(a)第1に、対象となるWC活動が(何らかの理由で)政府等による規制の対象となっている場合には、許可申請や報告のために文書形式が指定されている。この種の情報は公開されていることが多いので、たとえば特定のWC活動にともなう文書型情報を日米間で比較することが可能である。(b)次に企業活動のWC側面においては、実用書・手引書などの形で、実際の企業活動に使用される文書型情報の内容を推測するための資料が入手できる。これらの多くは公開された資料で入手可能であるため、これによって(実際には発表されない)企業活動にともなう文書型情報手段の日米比較を行うことが考えられる。本年度においては、米国についてFCCの資料、日本について総務省の資料を入手した。
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