1.企業に対するアンケート調査(2003年2月)を行い、企業の情報化の進展度、人的資本の程度、組織の分権化の程度等に関する調査をおこなった。この結果を3年前に行ったアンケート結果と比較すると、(1)課長が掌握する部下の数は非製造業では増加しているが、製造業では減少していること、(2)教育投資が減少していること、(3)パソコンのネットワーク化が進んでいること等が明らかとなった。 2.アンケート調査データと企業別経営データを組み合わせて、企業のコブ・ダグラス型生産関数を推計し、情報化が企業の付加価値生産性を向上させる効果を検討し、その研究成果を公表した。主な結果は、(1)日本の企業においては、米国以上に、情報化と人的資本の間には、相互補完的な関係が存在する。(2)日本の企業においては、情報化・人的資本が意思決定の集権化と結びついた時、生産性の上昇が期待できる可能性が高い。(3)情報化・人的資本・企業組織の間に成立する関係は、インターネットの普及によって変化しつつある。 3.また、情報技術が企業の生産性を向上させ、さらに企業の市場価値を上昇させているか否かを、企業の市場価値を非説明変数とし、資本ストック、土地ストック、その他資産、在庫、研究開発ストック、広告ストックと情報化進展指標、人的資本指標、企業組織総合指標を説明変数として分析した。その結果、(1)情報技術の導入は企業の市場価値を上昇させる。製造業におけるこの効果は非製造業の効果の2倍に達する。(2)製造業では情報化の進展が質の高い人的資本と結合すると企業の市場価値を高める。(3)情報技術は非分権的(集権的)組織で用いられるときに企業の市場価値を高める。日本の情報化と企業組織との関係は、米国における両者の関係とは異なる。
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