研究課題
本年度は、第1に、東京と大阪の同一規模(500床程度)の病院のデータを用いて、2000年の老人自己負担定率化導入前後で医師の診療行為がどのように変化したのかを、ノンパラメトリック手法を用いて定量的に分析した。その結果、いずれの病院においても定率化によって自己負担が小さくなる患者に対して画像診断や検査を増加させることによって医療費を大きくしていることが確認された。他方、自己負担が大きくなる患者に対しては、ふたつの病院で診療行為の変化が異なった。この違いは、それらの病院が直面している需要構造及び市場環境(独占的か競争的か)から説明することができる。さらに、これらの事実を説明するための理論モデルを開発した。第2に、市区ベースの歯科医師の新規参入データを用いて、歯科サービスの新規参入が続く地域では、一日当りの医療費が大きくなると同時に通院日数が少なくなることが確認された。この事実を説明することができる理論モデルを提案し、そのモデルおよび地域医療費のデータを用いて、歯科医師間の競争の結果経済厚生は大きくなっていることを示した。第3に、茨城県の医師会員データベースを用いて、診療所はどのような地域に新規に開業しているのかを分析した。その結果、すでに診療所が多く立地し歯科医師間の競争が厳しいにもかかわらず、大病院に近接した地域に立地していることが確認できた。このことは、大病院の近くに立地することは開業に伴う様々なリスクを回避することができたり、大病院自体が都市部にあるために家族の効用を高める可能性があることが示された。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
The Japanese Economic Review vol.55, No.4
ページ: 355-371
Institute of Planning and Public Policy Discussion Paper 1080
ページ: 1-29