研究概要 |
当研究の目的は、第一に、診療報酬明細書(レセプト)を用いて、医療サービス需要者側、供給者側ともに制度改正(自己負担率の変更や老人保健制度による医療費軽減措置)によってその行動がどのように変化したかをミクロレベルで分析することにあり、第二に、computer intensiveな統計手法(Bootstrap, Quantile Regression, Nonparametric regression等)を適用したレセプト分析手法を確立することであった。平成14年度は、歯科のレセプトと老人保健対象前後の年齢の被保険者(69歳から70歳)のレセプトを、Hurdle Negative Binomial(NB) Model、Zero-inflated NB model、Quantile Regression model及びNonparametric regression modelを用いて分析した。平成15年度は、市町村国保の保険財務データを用いて、医療サービス生産の費用関数を推定し、中央政府からの補助金が費用効率性にどのような影響を与えているのかについて実証分析を行った。また、家族の中で誰がどれだけ医療サービスを消費しているのかを、家計単位でレセプトを集計して実証分析を行った。その結果、他の条件を一定にすると、家族の人数が多くなると被保険者本人も扶養家族も受診を少なくするという意味で、健康リスクをシェアしているということがわかった。平成16年度は、健康保険組合の保険料の賦課方法についてEquivalence Scaleのアイデアを援用して、個人単位と家族単位との両方を用いて保険料を決定する方法について研究を行なった。また、東京と大阪の二つの400床規模の病院のレセプトデータを用いて、老人一部負担定率化前後で病院の診療行為がどのように変化したかを分析した。
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