研究概要 |
平成14年度においては、データ包絡分析(Date Envelopment Analysis)を動学化して、わが国電気事業の全要素生産性指数の計測を行った。これは、生産要素のうち資本を準固定要素と考え、期首に存在する資本ストックを当期のインプット、期末に存在する資本ストックをアウトプットとして扱うことにより、資本の最適投入に関する動学的条件を導き、それを参照することで各種の生産性および効率性を計測するものである。こうした分析法の基本的なアイデアは、先行研究(研究代表者の既発表論文を含む)によりいくつか提案されていたが、実証研究での本格的な応用例はアメリカの農業分野での研究に次いで二例目である、この研究では、わが国電気事業9社について、1981年から1995年までの生産性の変動を、技術進歩と技術非効率,配分非効率(一時点における生産要素投入の歪みに起因する非効率)および動学的非効率(異時点間における資本投入の歪みに起因する非効率)に分解し、かつ生産要素ごとに実際の投入量の最適水準からの乖離を計測した。その結果、わが国電気事業の生産性を規程する最も重要な要因は、動学的効率性であることが明らかになった。同時に、動学的要因を考慮しない伝統的な生産性計測法では、動学的効率性が無視されるために本来効率的であるはずの配分非効率に大きな値が計測され、誤った分析結果を導くこともわかった。要素ごとの評価では、資本ストックの過大傾向が明らかになり、特に送電部門の設備が効率的な水準に比べ大きいことが特徴的である。以上のような生産性指標は、生産性変化率の中にインプリシットに技術進歩率を含んでいる。本年度は、これを分離した形の生産性指数(Malmquist指数)に拡張する方法の理論的研究も行い、計測法をほぼ確立している。
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