研究概要 |
一様分布をもとにして様々な密度関数からの乱数の生成が可能である。しかし,簡単には乱数を生成出来ないような分布からの乱数を生成したい場合がある。このような任意の密度関数(以降,target密度関数と呼ぶ)から乱数を生成する手法として,Metropolis-Hastingsアルゴリズムという方法がある。Metropolis-Hastingsアルゴリズムという方法は,簡単に乱数を生成できる密度関数(以降,sampling密度関数)をもとにして,target密度関数から乱数を生成する方法である。この方法は,主にベイズ推定の分野で発展してきた。 今年度では,Metropolis-Hastingsアルゴリズムで使われるsampling密度関数に関する研究を行った。いくつかのsampling密度関数を考え,どれが最も実践上で有効かを考察した。この研究成果は,J.Gewekeとの共同論文として,Communications in Statistics, Theory and Methods, Vol.32, No.4, pp.775-789にまとめられた。結論としては,independence chain, random walk chain, Taylored chainの3つのタイプのsampling密度関数のうち,target密度関数に近ければ,independence chainによるsampling密度関数が最もよいという結論が得られた。また,ある確率でsampling密度関数から生成された乱数をtarget密度関数からの乱数とみなすというのがMetropolis-Hastingsアルゴリズムの考え方である。このsampling密度関数から生成された乱数をtarget密度関数からの乱数とみなす確率(acceptance probability)が高いからといって,target密度関数からの精度の良い乱数に生成されているとは限らないという結論も同時にシミュレーションによって導かれた。
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