研究概要 |
(1)所得分布データベースの整備:本研究を行うためには,可能な限り多くの国について,一人当たり所得・人口・のみならず,所得分布データの蓄積が必要である。所得分布データの基本部分は従来からの研究を通じて蓄積しつつあるが,本助成研究開始初年度である本年度はデータベースの充実を図った。近年の所得分布問題への関心が世界的に高まりつつある状況のもとで,この1〜2年の間に以前にも増して多くの所得分布データが国際機関や研究機関から公表されるようになっている。代表的なデータセットとしては,国連大学のWorld Income Inequality Database,世界銀行のHousehold Expenditure and Income Data for Transitional Economies(HEIDE)が挙げられる。本年度はこれらのデータセットの各所得分布について,定義,カバレッジ,信頼性の程度等の項目について内容を吟味し,これらを批判的に摂取し,データベースの充実を図った。更に未整備の所得分布データに関しては,モノグラフ等からの収集に努めている。 (2)経済的厚生や不平等の観点から異なった所得分布を比較するための計測手法についての基礎研究を厳密な公理主義的アプローチに基づいて研究した。特に現在私が提唱しつつある中間主義的不平等概念($\eta$-inequality equivalence)を他の従来の不平等概念と比較し,その優位性についての考察を深めた。更に現在はこの新しい中間主義的概念に対応した不平等尺度関数の公理的な特徴付けを行っている。
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