研究概要 |
本研究では世界的規模の観点から所得格差の実証分析を行う。より具体的には,世界各国の国民所得・人口・国内所得分布表の3種類のデータを出来る限り多く収集し,こられを全て用いて世界全体を対象とした大きな「世界的所得分布表」を毎年継続的に作成し,世界的規模での所得分布変動と,世界的所得分布に占める世界各地域の所得分布の相対的位置とその変遷に関する統計分析を行うことを目的とする。 1.このような研究を行うためには,可能な限り多くの国を対象として,所得・人口のみならず,国内所得分布データの蓄積を行うことが必要とされる。所得分布問題への世界的な関心の高まりの中で,近年多くの所得分布データが国際機関や研究機関から公表されるようになっている。一昨年・昨年度に引き続き,これら所得分布データの収集に努め,データベースの更なる充実を図った。 2.1960年代以降購買力平価換算の所得データが継続的に得られる(中国を含む)世界115国を対象とした世界的所得分布の計測結果からは,1960年代から70年代半ばにかけての不平等度の悪化と1980年代以降の改善,とりわけ1990年代における不平等度の急速な低下傾向を読み取ることができる。ところで中国の人口は2004年には12億9988万人に達し,世界人口のおよそ五分の一を占めるに至っており,中国の所得分布が世界的所得分布の位置に占める位置は決して小さくないと予想される。そこで本年度は特に,中国の所得分布が世界的所得分布に及ぼす影響を知るために,中国を含むケースとは別に,中国を除く世界的所得分布の計測を行い,世界的所得分布の密度分布に中国の所得分布がどのような影響をもたらしているかを考察した。計測の結果,1990年代の世界的所得分布の不平等の急速な低下は中国の急速な経済発展による影響が大であることが計量的に確認された。
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