研究概要 |
本年度は、前年度までに筆者が収集した統計データに加えて、各国の統計局や政府関連機関が刊行している資料集を渉猟し分析を進めた。本年度新たに入手したものには、中国(全国レベル、省・特別市レベル)、タイ、インド、インドネシアなどに関する最新の経済統計・労働統計がある。また、タイ、香港、中国の広東省に出向き、日本では入手困難な統計資料を収集するとともに、バンコク首都圏、香港、中国・広東省で労働市場に関する実態調査も実施した。 蓄積しているマクロ・ミクロの資料分析は鋭意すすめており、その成果の一部は本年度内に2編の論文として発表した。(1)The Forefront of the Labor Market in Indonesia : A Case Analysis of Jakarta Metropolitan Area, Economic Journal of Hokkaido University, Vol.33, 2004.(2)「インド日系企業の労働市場-デリー首都圏の事例分析-」『経済学研究』(北海道大学)第54巻第3号、2004年12月、である。(1)は、以前に実態調査したインドネシアのジャカルタ首都圏に位置するブカシ県の労働市場について、新たに統計データを付け加えて分析したものである。1990年代以降のジャカルタ首都圏で開発の最前線となっているブカシ地方の工業団地(一部は輸出加工区)の日系企業の労働市場の特質を、同じくジャカルタ首都圏の先行開発地域のそれと比較しつつ分析し,とくに1997年の経済危機以降の労働市場の変容に注目した。(2)は、前年度に実態調査を実施したインドのデリー首都圏の労働市場に関する事例分析である。1990年代初頭以降、経済自由化の進むインドでの新たな労働市場の展開と、インドに独自のカースト制度などが労働市場の形成に及ぼす影響などに着目した。 次年度は本研究の最終年度となるので、収集したデータの総合的な分析とともに、補足的な実態調査も年度の早期に実施し、最終的な研究成果報告書を取りまとめる予定である。
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