本年度は、前年度までに筆者が収集した統計データに加えて、各国の統計局や政府関連機関が刊行している資料集を渉猟し分析を進めた。本年度新たに入手したものには、中国(全国レベル、省・特別市レベル)、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシアなどに関する労働経済の統計資料がある。またインドネシアとマレーシアに出向き、日本では入手困難な統計資料を入手するとともに、ジャカルタ首都圏、クアラルンプル首都圏において労働市場に関する実態調査も実施した。 蓄積しているマクロ・ミクロの資料分析は鋭意すすめており、その成果の一部は本年度内に2編の論文として発表した。(1)「上海市の日系企業と労働市場・・・再訪SB社の事例分析」『経済学研究』(北海道大学)第55巻第1号、2005年6月、(2)「タイ日系企業の労働市場-バンコク首都圏の事例分析-」『経済学研究』(北海道大学)第55巻第3号、2005年12月、である。(1)は、以前に実態調査した上海市の日系企業を再訪し、上海の外資系企業の労働市場について新たに統計データを付け加えて分析したものである。上海は中国都市開発の最前線であり、労働市場の変貌も著しい。特に同じ中国の他地域やアジア主要国のメガ都市の労働市場展開との異動に留意して分析した。(2)は、タイのバンコク首都圏の労働市場に関する事例分析である。タイでは、97年経済危機からの回復とともに、外資系自動車産業を中止に新たな労働市場の展開がみられる。東南アジア各国の大都市圏でこれまでに実施した調査事例を活かして、国際比較の視点からバンコク首都圏の労働市場の特質を考えた。 なお、本年度は本研究の最終年度となるので、収集したデータの総合的な分析とともに、本年度に実施した調査の成果も含めて、最終的な研究成果報告書(冊子体)を取りまとめる予定である。
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