私は中国における国有企業の経営者支配に関する研究を行っているが、平成14年度は主に二つの大企業を対象に事例研究を進めてきた。 その一つは湖北省にある美爾雅紡織服装実業集団公司についてである。同公司は国家所有の持ち株会社でその傘下に上場企業を含む多数の関連会社を持っている。その経営者は、1980年代中頃から就任してほとんどすべての権限を一身に集中させ、典型的なインサイダーコントロール企業である。 もう一つは河南省にある銀鴿高新紙産股分有限公司についてである。同公司は国家が支配株をもつ上場企業であるが、その国有株は地元の政府が所有することになっている。その経営者も長期政権の体制をとってきたが、地元政府からの経営干渉がひどく、経営者支配の体制が成立しなかった。 この研究は上述二つの対照的な事例で経営者支配の成立と不成立の理由、またそれが経営に与えた影響について事実に基づき解明を行った。 なお、1月26日京都で「国有企業の所有権改革の諸問題」という題で研究発表を行った。この発表は美爾雅紡織服装実業集団公司の研究で明らかになった上場企業とその親会社との関係に注目して国有企業改革における持株会社の役割を分析したものである。中国で上場企業の大半は国有企業から改組したもので、持株会社の国有親企業を持っている。この組織構造と経営者支配との関係についての分析が来年度の研究テーマになる。
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