2004年5月にEUの東方拡大が達成され、EU構成国は25カ国へと拡大した。1993年の市場統合、99年の経済通貨同盟により「国民経済化」したEU経済領域は、中東欧諸国まで拡大した。未だ、労動移動の制限という過渡期の措置、単一通貨の未達成という面はあるが、「物」、「資本」を中心に、EU構成国間での一体性は急速に進んでいる。大欧州にわたる経済の一体化は、急速に、国際ネットワーク型生産を普及させている。EU企業による国際ネットワーク型生産は、EUの市場統合過程で、南欧を中心にEU構成国の周辺国と中核国の間で展開され、ポスト冷戦後の中東欧諸国のEUへの組み込みを図った93年の欧州協定のもとで進展を見たが、中東欧諸国10カ国の加盟が現実化した段階で急速に拡大しているのである。EU企業は、EU地域のみならず、中東欧地域にわたり、広汎な市場を前提に、物流の再編や工場の再編成を追求している一方で、日本・アメリカの多国籍企業も中東欧諸国を生産基地として認識しており、同様に広域にわたる国際ネットワーク型生産を展開している。国際ネットワーク型生産の有力な紐帯は、IT革命による情報ネットワークであるのは言うまでもない。 EU経済の広域にわたる「国民経済化」を背景にして展開される国際ネットワーク型生産については、2002年度の中東欧諸国の調査を踏まえ、2003年度、2004年度の文献調査に基づき、直接投資と貿易の関連性を中心に、実証分析を進めている。また、国際ネットワーク型生産を支えるIT革命の中東欧諸国の拡大(eEurope2003+)、EU全体へのフォローアップ(eEurope2005)およびIT革命下のEU経済社会モデル(リスボン戦略)の中間報告である「サピア報告」(The Sapir Report)の検討を行う準備をしている。
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