2002年6月、我が国が批准した京都議定書では締約国は1990年を基準年とし、地坪温暖化ガスを2008年〜2012年の5年間で6%削減しなければならないことになっている。我が国の地球温暖化ガス排出量は13億3200万トン(2000年度)と見積もられ、その9割を占める二酸化炭素の排出量の内、産業部門は、4億9500万トン、民生部門は、3億1800万トン、運輸部門は、2億5600万トンの排出量となっている。1990年度比で見ると、産業部門は、0.9%と微増に留まっているのに対し、民生部門は21.3%増、運輸部門は20.6%増となっている。産業部門における二酸化炭素削減を省エネルギーによって削減することを考えると、1970年代に、我が国が経験した二度の石油危機以降、省エネルギー意識の徹底や産業構造の転換、技術革新等により、すでに、省エネルギー化が浸透しており、大幅な削減は期待できない。そこで、本研究では、増加する民生部門、特に住宅・建築物由来による地球温暖化ガス削減の政策手法について検討した。 地球温暖化対策として政府はさまざまな政策手段オプションを持つが、それぞれの政策手段には特有の長所と短所があり、政策立案に当たってはそれぞれのメリットでメリットを生かして最良の選択を行うべきである。基準による規制は一般に経済効率的ではないが効果的に実施されれば、一定の環境目標を達成する政策手段となることが可能である。補助金プログラムは、フリーライダーの問題をクリアできれば建物のエネルギー効率化投資を促す可能性がある。エネルギー税のエネルギー効率化投資への潜在的効果ついては否定的、肯定的両方の研究結果がある。ラベル制度は情報による経済劇手法であり、理論的には大きな役割を果たすことができる。建物からのCO2排出量を減らすための政策手段としてはそれぞれの政策手段のメリットを生かし規制手段と規制以外の手段、経済的手段と情報ツールの併用などを行ないながら建築規制の環境効果と経済効率を改善することが必要である。
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