当初の年度研究プランに従って、ロシアにおける新興財閥の動向を追跡し、加えてスモールビジネスの形成(「起業」)の実態を研究してきた。経済エリートに関する経済社会学研究および企業システムの比較をミクロ、メゾミクロ面で研究し、自由市場を構築する条件面での経済理論的解明をおこなった。この研究によってえられた新たな知見を要約すれば以下のようになる。市場経済移行の経済政策を自由化、安定化、民営化などの政策体系で推進する経済自由主義的政策として限定的にとらえるのではなく、市場化における主体(アクター)の合理的、主体的行動に注目し、そこで生じる問題であるレントシーキング行動を分析することが重要であること、またレントシーキング行動自体を政府が容易に除去することが困難であることを吟味した。新興財閥、経済エリートの行動様式とその対極にあると考えられているスモールビジネスの形成問題をレントシーキング問題に注目することで構造的に把握できたことが最大の成果である。
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