本研究では、第1に、中東欧諸国における市場経済移行全般の概観を行った。これにより、中東欧諸国において存在する経済格差は初期条件と市場経済移行政策の進展度の相違によること、少なくとも短期においてはこの経済格差は縮小しないこと、この経済格差を埋めるためにはとりわけ南東欧諸国はこれまで以上の努力が必要とされること、EUを含めた外国からの支援もこの際に重要な役割を果たすことが示された。 第2に、ルーマニアにおける市場経済移行の概要と外国直接投資に関する分析を行った。これにより、ルーマニアにおける外国直接投資誘致政策は、それなりに整備されてきたものの、中欧諸国と比較しても弱いインセンティブしか有しておらず、また対EUとの関係で、今後インセンティブを強化できる見込みはないことから、外国直接投資の誘致のためには、法的・経済的ファンダメンタルズを強化することが肝要であることが示された。 第3に、ブルガリアにおける外国直接投資に関する分析を行った。これにより、ブルガリアは、今後、外国直接投資・技術の利用により経済ファンダメンタルズの底上げをはかる必要があるが、この面では中・東欧8カ国と比較して大きく遅れをとっていること、外国直接投資流入を促すための優遇措置は不十分なものに終っており、ブルガリアが市場経済移行を完成させ、欧州連合加盟するためには、今しばらくの努力が必要であることが示された。 第4に、他の中東欧諸国のサンプルとしてバルト3国の経済状況に関する分析を行った。これにより、3国の経済過程は全体としては成功してきたが、対外不均衡という共通した困難に直面していること、軽工業には競争力を持つが、ハイテク・ITを中心とした他産業の競争力は低く、EU加盟後は、中小企業育成を中心として、これら産業の競争力を引き上げ、現EU加盟国との競争にごしていかなければならないことが示された。
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