研究概要 |
「環境ディスクロージャーの経済政策-制度化に向けた実証研究-」は3年をかけて研究する予定の課題である。2年目の本年度は、(1)環境報告書の開示企業および開示年度を調べる、(2)環境報告書を開示した企業の特性と開示の経済的影響を分析する、(3)分析に必要なデータベースを構築する、という作業を実施した。 (1)と(2)の成果の一部が、「法的規制で環境会計の情報開示を進めよ」『エコノミスト』毎日新聞社(2003年12月16日)第81巻第62号,54-57頁に掲載された。これは,第一に,日本の証券投資家も環境に対する意識は高いということをデータ基づいて論じ,第二に,それもかかわらず,比較可能な環境会計情報の開示は企業の自主性に委ねられ,あまり進んでいないことを指摘し,第三に,環境会計情報開示の株価効果が観察されるアメリカの事例などから,日本の環境会計制度のあり方を探ったものである。米国では、制度会計としての環境会計情報が意思決定支援機能を適切に果たし,他の財務会計情報と相俟って機能改善の乗数効果を発揮している。わが国の財務会計について意思決定支援機能の改善を求めるのならば,制度会計としての環境会計の構築が不可欠だといえよう。 (3)のデータベースを構築するために,本年度はコンピュータを購入した。私が所有していたものよりも遙かに高性能なので,データの活用がスムーズに行われている。次年度に上記のような米国の実証研究の成果を踏まえて、我が国企業について実証研究するため、現在、データ・ベースを構築中である。すでに,環境報告書を作成公開している企業名,その開示時点,当該企業の財務データの入力は完成した。あとは株価データを入れて,環境報告書の公開が株価に与えた影響などを分析し,環境会計情報のディスクロージャー制度について提言をしたい。
|