本年は、産業構造の変化をテストするための理論的検討を行うことに集中的に時間を用いた一方で、マクロ経済データ及び財務データの購入と、それを分析するためのソフトの導入を行い、データベースの構築を主に行った。 方法論の検討は、主要には計量経済分析の分野における構造変化テストのためのGMM法とその応用であるPS-GMM法を検討した。個別の財務データを用いる際のパネル分析などへの検討までは時間が取れなかった。GMM法は、推定パラメータと変数のインバリアントな関係を用いて、逆に最適なパラメータを推定するというアイディアを用いた方法だが、その上限値を構造変化と見なそうとするのがPS-GMM法の着想である。だが、この方法が、従来の繰り返しChow検定法やダミー変数を複数個用いることで構造変化を吸収する方法と、どの程度の違いがあるのか、更なる検討が必要である。 他方、データベースの構築では、日経NEEDSのマクロ経済データの主要系列と、上場企業財務データを購入し、マクロレベルとミクロレベル、また、必要に応じてパネル分析が可能なデータ的環境を整えた。本年構築したデータは、国際面と金融面において、なお不十分な点を残しているが、これらの点は、分析手法の整理を進めながら、適宜他の外部データベース(例えば、国際連関表や国連、日銀公表データなど)を利用していこうと考えている。 また、このデータベースは、各種ソフトの利用によって分析を可能な状態にした。特に本年は、神戸商科大学経済研究所の斎藤清教授が開発されたXCAMPUS Ver.10を導入し、ウェブ環境から利用できるよう、研究室のコンピュータをサーバマシンにする作業も行った。 以上
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