本年は、日本の長期不況の原因を、日経NEEDSデータを中心に数量分析することに重点が置かれた。また、先進国における同様の長期不況との比較のために、EU及びドイツを取り上げ、集中的に資料収集も行い、更に、アジアの景気動向との比較のためにASEANのマクロデータを中心に、その概況を分析してきた。 マクロ集計量データは、各経済活動別と需要項目別、更に、付加価値項目別によって、三面等価の各局面の寄与度分析が可能で、簡易に成長貢献度を把握できるので、その方法を多用した。その結果、経済活動別にはサービス及び電機が、この10年間で貢献の大きい産業であることが分かった。但し、生産性の水準では、サービスは低く、電機など製造業が突出する結果となった。付加価値では、営業余剰の貢献度が低くなっていること、需要では投資需要の落ち込みが大きいことなどが把握できた。 EUにおいては、EU全体の成長へのドイツの貢献度は2000年前後にはそれほど大きくなく、ドイツ自身の構造的不況は、それほどEU全体に大きな影響を与えているとは言えないことが分かった。ASEANでは、マレーシア、タイの寄与が大きい結果となった。 現在、これらのマクロデータを用いたシミュレーション用計量モデルの作成と、パネル分析用のデータ整理を引き続いて行っているところであり、これらの簡易モデルによって、統計的な分析を更に深める予定である。方法論的には、当初予定していたPS-GMM法よりも、ダミー変数による構造変化吸収による方法のほうが、簡便であるので、それによる分析を中心に行っている。また、集計量データの不突合の誤差性に関する簡単な検定方法も考案した。
|