報告書の構成と概要は以下の通りである。 第一章 日本経済の長期データの特徴、第二章 日本経済の成長率要因分解、第三章 生産要素とデフレの状況、第四章 日本経済の国際経済依存度。 第一に、日本のマクロデータの長期系列(45年間)の単位根検定を行い、その非定常性を検定した結果、名目GDP、デフレータ、実質GDPともに非定常であることが明らかとされ、特に、GDPデフレータはI(2)変数であることが分かった。変数選択等は、この次数を元にすすめられるべきであることが診断された。 第二に、日本の長期不況の原因を、三面等価の見地から寄与度を求め、各局面においてどの項目が日本の長期不況の主要因となっているのかを検討した。この結果、生産面では建設、商業などの非製造部門が、需要面では民間消費支出が、付加価値面では営業余剰が、各々90年代に深刻な落ち込みを示しており、日本の長期不況の主要因となっていることが分かった。 第三に、長期不況の規模と物価の状況について検討した。バブル経済の崩壊は、倒産件数のみならず負債総額に深刻な影響を与えたとともに、失業率及び賃金下落にも大きな影響を与えていることが把握された。また、マネー・サプライの伸びが鈍化しているのは、金融機関における貨幣退蔵(貸し渋り)による可能性が高いことが、マーシャルkの上昇などで確認された。 第四に、現在及び今後の展望として、内需喚起のための失業対策、新雇用政策だけでなく、国際経済依存度への大きさが分析された。特に、中国及びアジアとの輸出入の規模と影響力が、長期不況脱出の一つのキーとなるため、国際連関表による依存度分析を行い、中国の影響力の大きさを確認した。
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