ドイツにおける新しい型の労働力輸入はそれ以前の戦後型ともいうべき様式と対比するとき断絶性と連続性の二側面をもっている。 第二次世界大戦後のドイツは政府間の募集協定にもとづいて労働者の個人としての国境を越える移動を組織化した。国内の労働市場においては労働条件のドイツ化=国内化が徹底された。国内労働市場と募集諸国から構成される国際労働市場との分断線は確固として堅持されたうえで両者の接合がなされた。戦後型労働力輸入の核心がここにある。外国人労働者の経済的な統合の予想外の成功はこの分断を前提とした労働条件の徹底した国内化に起因している。 労働力輸入の戦後型の基本構造をこのように把握するとき、再構築の構図が明確になる。分断線の基軸はEU域内と域外とのあいだにシフトした。建設労働市場における国境の分断線は希釈化した。労働条件の徹底した国内化は放棄された。国内労働市場における価格破壊が規制を伴いつつも着実に進行した。国際貿易の論理が国内労働市場と国際労働市場との接合を牽引している。労働力輸入における断絶性がここにある。 他方、戦後型のもとにおいて達成された経済的統合の実態がもはや非市民としての形式と調和しえないことが誰の目にも明らかになってきたとき、形式を実態に合わせる政治的力学が働いた。外国人法の改正および新国籍法がそれである。ドイツ版グリーンカードにもとづいてIT技術者を全世界から招致しようという企画は労働移民の統合という戦後型の基本様式を踏襲しており、しかし同時に戦後型に付随した統合の政治的制約が除去されることによってはじめて成立したものである。移民法は古典的な移民国家への方向性を否定し、ドイツ固有の戦後型との連続性を再確認したとみなすことができる。
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