前年度の統計分析により、労働市場における大きな変化が進行していることが明らかになった。すなわち製造業雇用の縮小と、とりわけ技能職への求人が激減していること、その結果、産業にしめる製造業のウエートの高い地域の雇用がとくに悪化していることが明らかになった。その現象は1990年代に入り目だつようになったが、その傾向は1980年代から観察することができた。こうした技能職の雇用減退の原因を探ることが重要である。本年度の統計分析からは、製造業技能職の雇用減退は一般にいわれるほど海外生産や海外からの輸入の増加との相関が強いわけではなく、どちらかと言えば、技術変化により企業が求める労働者の技能の変化が生じたことがつよく影響していることがわかった。技術変化といっても、80年代のマイクロエレクトロニクス技術と90年代の情報技術とは技術の内容自体は異質であるが、労働需要のあり方への影響には連続性を有しており、いずれにしてもヨリ高度な技能への需要を引き起こし、さらに需要の対象を高卒者から大卒者へとシフトさせる要因ともなっていることが明らかになった。こうしたなかでとくに製造業の多く集積した地域の雇用政策はその内容の変化と高度化を求められている。この点が次年度の研究の焦点となる。
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