本研究の目的は、ヨーロッパ諸国において、労働時間の短縮によって失業を減らそうとする「ワークシェアリング」が、どのような労使関係プロセスを通じて実施され、どれほどの雇用効果を上げているのかを、現地での実態調査を通じて明らかにすることである。 ワークシェアリングとは、限られた雇用量を、時短により失業者を含むより多くの労働者で分かち合うとする雇用の維持・創出策である。本研究が注目するのは、1980年代よりとくに女性を対象に「パートタイマー化」を進めてきたオランダと、98年および2000年に「週35時間労働法」を制定してフルタイマー雇用を創出しようとしてきたフランスの2カ国である。 本研究は3年計画である。初年度に当たる平成14(2002)年度には、まず、2002年10月、フランス、オランダ両国を訪れ、雇用連帯省DARES(フランス)、アムステルダム大学AIAS(労働研究機構、オランダ)などを訪ねて、両国のワークシェアリングの現状、この問題をめぐる研究調査の状況、調査対象産業(企業)の候補などについて討論を行った。これが本年度第1回調査である。 この訪問の成果に基づいて、初年度は調査対象をオランダに絞ることとし、調査対象部門を、1990年代後半から積極的にパートタイマー化を進めてきた銀行に決定した。その後、アムステルダム大学AIAS、オランダ大使館、銀行経営者協会などの協力を得て銀行へ調査を依頼し、2003年3月、オランダの2大銀行、ABN-AMRO銀行およびRabobank銀行の人事部にてワークシェアリングに関するヒフリング調査を行なった。また、オランダ銀行産業労組においてもヒアリングを実施した。この第2回調査の成果は、分析検討の上、早急に報告する予定である。
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