今年度は、アングロサクソン型金融システムに対するアメリカの研究者の認識と、日本における認識を比較することを狙った。前者については、ロサンゼルス近郊のカリフォルニア大学リバーサイド校世界システム調査研究所へ客員として滞在し(平成14年10月)、アメリカにおけるエンロン事件やワールドコム事件を発端とした資本市場をめぐる諸々の事件の認識について意見交換を行った。その成果として、カリフォルニア大学教授の論考を雑誌『週刊エコノミスト』に訳出した。 一方、日本では、広島でマツダ自動車のフォード化(フォードが最大株主になったこと)によっていかなる経営姿勢に変わったのかについてヒアリングを重ねるとともに、アジア志向の強かった福岡の代表的企業やマスコミからも、アジア志向の顛末についてヒアリングを重ねた。 これらの結果、マツダのフォード化がフォードのグローバル戦略のもとでの買収だったこと(中国市場狙い)、あるいは、日本企業のアングロサクソン化といっても、地元での定着度という点では、なかなか根付くというところまではいっておらず、自治体関係者や従業員の意識を含めて、フォード化によるマツダ離れが進んでいる印象を受けた。とはいえ、福岡のアジア志向も、アジア通貨危機以降は方向が定まらず、その影響での不況進化も囁かれていた。後者の部分はまだ活字にはしていないが、資本市場がなぜ根付かなかったのか、さらには日本におけるグローバリゼーションへの反応については、今年度に図書(筑摩書房より平成15年に公刊)や、いくつかの論考にまとめた。
|