研究課題
基盤研究(C)
アメリカモデルはどれほど一般解として妥当なのかについて、アメリカのニューエコノミーと称される経済構造の矛盾を、ファストフード業界や流通業界の林立と、低賃金層の増大に求め、ITとナスダックの両輪によるベンチャー・ビジネスの成功という認識が一面的だということを分析した。一方、日本を含むアジアでは、グローバリゼーションの浸透によるアメリカモデルの席巻がこの10年あまりの特徴だった。とりわけ、1997年から98年にかけての通貨危機以降においては、不良債権ビジネスの主役は圧倒的に欧米系ファンドが占め、価格の下がったアジアの資産(不動産や株式)を買収する新規投資家には欧米系資本が中心だった。この点が、、「アジア的価値」や「儒教資本主義」といった思考様式が幅を効かせたそれ以前との相違である。つまり、グローバリゼーションの風圧によって、アジア的価値観の妥当性を問うといった視点よりも、各種のファンド・ビジネスによって買い叩かれた不動産や企業が、欧米系資本によって買収されるという事態が続き、株式時価重視や収益性重視の風潮が勢いを増した。日本でも、かつての含み益重視は後景に退き、持ち合いによる安定性よりも、収益性重視の手数料ビジネス、キャッシュ・フロー経営が人気を集めた。間接金融よりも直接金融、銀行よりも資本市場、基礎的な研究開発よりもM&Aといった価値観が席巻した。公的ガイダンスよりも、民営化や市場機能重視が社会的風潮になった。こうしたグローバリゼーションのアジア宅の広がりは、一方の主役・中国を台頭させた。中国は改革開放の勢いに乗り、外国資本の導入に躍起となり、輸出競争力を加速させ、巨大な人口を武器に、世界最大の工場から世界最大の市場へと変貌を遂げた。それによって、東南アジアや東アジア域内における対中国取引の比重は増大し、各国が中国とFTAを結ぶ意欲を強めた。さらに、東南アジアの経済的担い手に華人が多いことから、アジアは全体的に華人圏だという声を聞かれるようになり、東アジア共同体へのシナリオは、中国と東南アジアとの合作が主導する。つまり、グローバリゼーションの勢いがアメリカモデルの浸透のみならず、中国と華人圏という新たなファクターを生み出すことによって、アジアは新たな躍動局面に入った。脱亜に拘ってきた日本的近代化のあり方の再考が求められている。
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