企業の特許ポートフォリオ(より一般的には企業の技術資産)と企業の技術標準戦略との関係を考察するためには、企業が有する技術知識が企業間でどのようにコーディネートされるか、またこの種のコーディネーションの態様が技術知識間の関連性の程度とどのような関係を持つかを考察しておくことが必要である。そこで、今年度前半においては、専門誌上で展開された議論をベースにしながら、技術知識のコーディネーションの態様が企業戦略に与えうる効果を、技術知識の性質に遡って検討する作業を行った。この作業の成果は、論文「技術知識の性質と知的財産権制度・競争政策の役割」に収録されている。 上記作業の過程で、とりわけIT系業種における企業の標準策定戦略が、(1)技術知識のコーディネーションのあり方に影響を与える企業間結合の態様(合併・買収・提携等)、(2)企業が有する技術資産、の2つの要素に大きく影響される可能性があることが次第に明らかになってきたので、今年度後半においては、IT系業種(特に家庭用電気機器産業)における近年の企業間結合の実態並びに家庭用電気機器産業(特にCD及びDVDに関する)における各プレーヤーの特許ポートフォリオに関するデータの収集と分析を行った。このうち、企業間結合の態様と企業の標準策定戦略との関係についての分析成果(上記(1))の一部は、今秋上梓される書物の1章として掲載予定である(論文「先端技術分野における企業間結合の特徴-企業の標準策定戦略との関連(仮題)」)。 また、企業が有する技術資産と企業の標準策定戦略との関連(上記(2))については、実証分析作業を継続中である。現在までのところ、CD並びにDVDに見られた事前的な標準策定作業(フォーラム活動等)に対する各プレーヤーのスタンスが、各プレーヤーが有する技術資産に影響されていることが実証的にも確認できるとの帰結を得ている。これについては、来年度(平成15年度)前半にworking paperとして中間的まとめを行い公表する予定である。
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