新たに顕在化する社会的企業は、既存市場セクター、公共セクターとの接点において多くの課題を有している。本研究では、こうした活動が先行する英国における現状を調査し、社会的企業育成のための制度設計のあり方、さらにかかる企業群が雇用創出・仕事づくりを行ううえでの課題・政策提案を行った。変化し進化する社会的企業の動向を、コミュニティ・ビジネスからソーシアル・エンタープライズへのシフトとして捉え、ここ10年間の動きを展望した。その際、これまで曖昧に議論されることが多かった社会的企業についての定義や特色を整理し、市場や公共との関係から導出される社会的経済における位置付けを行った。さらに、リバプールやスコットランドにおける現地調査に基づき、事例の分析等を行った。ここでは、雇用政策としての位置付けから、より広義の地域社会主体としての社会的企業の役割が強化されつつあることを明らかにした。英国における、法的位置付け、ブレア政権以降における地域政策とのかかわりなど、今後日本がかかる領域を展開するうえで多くの示唆を得ることができた。こうした調査結果を踏まえ、日本型社会的企業のあり方、今後の展開に向けての課題の整理をおこなった。実際には、情報公開のあり方、社会的監査(social audit)実施に向けた課題、社会的企業のマネジメント、マルチ・ステイクホルダー型組織運営のあり方、社会的企業の「価値」の問題など、その課題は多岐にわたることを明らかにした。
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