本研究は、わが国を含め欧米を中心に加速度的に台頭しつつある社会的企業(Social Enterprise)が、雇用の創出に及ぼす効果やその評価について英国での先進事例の検討を通じて明らかにすることを試みた。ここで言う社会的企業とは、これまでコミュニティ・ビジネスやコミュニティ・エンタープライズと呼称された社会的目的を有している経済組織全体を総称している。社会・(公共)的な冒的達成に企業的活動を巧みに組み込もうとするかかる活動は、実際には多様な形で固有の文化的背景のなかから発展してきている。その主たる狙いは、雇用の創出、仕事づくりにある。本研究では、まず英国におけるソーシアル・エンタープライズの現況について、社会的経済台頭といった背景のなかでの成熟資本主義国における位置付けを行りた上で、ソーシアル・エンタープライズの定義、具体的な事例の検討からその課題・評価を整理した。さらに、日本における展開のための政策的なインプリケーションについても検討を行った。さらに、本研究では、日本でのソーシアル・エンタープライズのあり方の方向として、「中間労働市場」形成のなかでの活動といった視点から検討を行った。実際には、阪神・淡路大震災において雇用状況がきわめて深刻な被災地における復興を事例としつつ、巨大災害からの復興における役割、さらには今後予見されるわが国労働市場の状況を鑑みつつ、新たな労働市場のあり方として日本型「中間労働市場」を提案した。
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