この調査研究計画に基づき、平成14(2002)年度におこなった調査研究の概要は以下の3点のとおりである。 1 今年度は北米自由貿易協定(NAFTA)の締結(1994年)の前後における日本企業のNAFTAへの対外直接投資の様子を、本協定締結国ごとに、かつ業種別に調べる資料を製造業を中心にして収集し整理した。 2 日本企業のNAFTAにおける事業展開の様子をネットワーク化の観点で検討するため、子会社・孫会社の設立・操業に関する基礎的な資料を部分的に収集・整理した。 3 日系企業のNAFTAにおけるネットワーク化の分析のために、さらに日系企業と取引をしている地元企業の資料をできるだけ収集し整理する過程に現在はある。 以上の調査・研究を進める過程で得られた新たな知見は以下のとおりである。 NAFTAの締結と前後して、日本企業はこの地域へ対外直接投資を活発におこなってきた。しかし、1997年秋にアジアで生じた金融危機の後においては日本の対外直接投資の様子は変化した。っまり日本の対外直接投資はバブル経済後、衰退気味に推移するとともに、全体としての特徴は日本の対外直接投資の趨勢がアジア、とりわけ中国へと大きく舵取りを変えた。アジア(とくに中国)における日本の対外直接投資の大宗は業種でみると製造業が中心である。対照的にNAFTAへの進出は一段落となった。このような傾向のなかで、自動車産業を中心に一部の産業に属する日系企業は地元企業との取引を着実に拡大している。つまり、産業ごとの跛行色が鮮明になっている。 今後の調査研究の進め方はいままで収集整理した資料の読み込みをおこなうとともに、事業活動のグローカルな程度を把握する指標を考え、それを用いて事業のネットワーク化の様子を分析する予定である。
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