本報告書は自由貿易協定(FTA)のなかでもユニークな特徴を有する北米自由貿易協定(NAFTA)に注目し、日本企業のNAFTAにおける事業活動を分析した。分析は貿易や直接投資といった量的な面と企業のつながりや子会社・孫会社の設立といった質的な面からおこなった。 分析の結果、得られた知見の要点は以下のことである。貿易の流れを1984年-2002年のデータに基づいて検討してみると、貿易量が大きく拡大したことがわかる。その内容はNAFTAが協定で謳う自由貿易のメリットが協定締結国(加盟国)でみられる。メキシコは最も大きなメリットを受けた。しかし、メリットは非加盟国には及んでおらず、むしろ通商障壁となり、管理貿易となった。 障壁は非加盟国に対して直接投資を活発化させる誘引を与えた。NAFTAにおいてみられる直接投資の伸びをフローとストックの両面で1980年-2002年の間に関して調べると、日本と加盟国との間の対外投資は加盟国同士のものを大きく上回った。 その理由と内容を日本の自動車メーカーのNAFTAにおける事業展開について分析してみると、日系自動車メーカーは域内で子会社・孫会社を設立し事業ネットワークを構築するかたちで日系メーカーとのつながりを強化するとともに、地元企業とも取引を拡大・深耕させ、事業の集結(アグロメレーション)を進めている。
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