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2002 年度 実績報告書

EU野菜生産の拠点化と価格・貿易競争下のスペインにおける外国人労働者の多元化

研究課題

研究課題/領域番号 14530069
研究機関拓殖大学

研究代表者

中川 功  拓殖大学, 政経学部, 教授 (30188891)

キーワードスペイン野菜生産集積地 / EU向け輸出相手国の変化 / 農業所得補助金比率の格差 / 低賃金・不法就労 / 外国人労働者の多元化 / 送り出し国の経済変動 / モロッコ人労働者自治組織 / 日系人・研修生受入制度の確立
研究概要

I.スペインの受け入れ要因の明確化と多元化について
スペインにおいては、外国人労働者の研究者、モロッコ系外国人労働者の自治的組織代表者、野菜生産・輸出業者組合の三者に対して聞き取り調査を実施することができ、以下のことが判明した。
1.アルメリア県の野菜生産は、ますますEU輸出向けが増加している。1999年から2001年にかけてもトマト、ピーマン、ナス、西洋カボチャ、レタスなどの輸出は連続して伸びている。その結果、アルメリア県へのEU域内野菜生産・輸出の集積が、5年前の調査時より一層進んだことが判明した。
2.EU域内向け輸出相手国の貿易量には若干の変動がみられる。ドイツが主要な輸出相手国であるが、輸出量の伸びは停滞し、過去3年間においては減少傾向かもしくは一定水準にとどまっているのに対して、フランス、オランダへの輸出が伸び、とりわけイギリス向け輸出の増加が著しい。これは、5年前の調査結果と異なる変化である。
3.新しい見地として、野菜生産集積地であるアルメリア県、ウエルバ県、ムルシア県の3県に対する農業所得補助金は、同じアンダルシア自治州内の穀物生産地であるセビリア県における農業所得補助金よりも、はるかに少ないことが指摘できる。暫定的試算では、アルメリア県全体の農業所得に占める同補助金比率は5%前後であり、最も少ないカナリア自治州の3.6%に次いで少ない比率となっている.
4.このような野菜生産費の補助金比率の低さは、農業経営にコスト管理の厳格さが導入される要因となっており、ここに、外国人労働者をスペイン農業部門が低賃金で雇用する農業経営環境をつくりだしている。この両者の関係が外国人労働者の受け入れ要因を再生産しつづけているのである。
5.外国人労働者の出身国に関する近年の特徴は、一層「多元化」していることである。ムルシア近郊のロルカでは、中米エクアドルから野菜収穫・出荷作業に多数が従事し定住化していた。ウエルバ県のイチゴ生産はヨーロッパ一の規模を誇るが、3月にはじまった収穫作業では、ロシア人ポーランド人など東欧から移動して労働に従事していた。
6.モロッコ人の自治組織は、民主的に運営されていることが判明した。4年に一度は執行部が変わるが、執行部の提案は半年ごとに厳格にチェックされ、その他の会員にも情報公開されてチェックを受ける。提案とその結果とが、会員に不適切だと判定された場合には投票で執行部は交替させられる。
II.日本の外国人労働者の受け入れをめぐる論調について
日本の受け入れ圧力は二つの異なる立場から再び高まっている。一つは企業経営の立場からであり、もう一つは移動の自由を認める立場からである。過去20年間における論調の分析によると、政権党・政府の政策とこれら両者の見解との矛盾解決の方策として生まれたのが日系人受け入れであり、研修制度誕生であったことが判明した。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (1件)

  • [文献書誌] 中川 功: "外国人労働者受入論議が照らし出す日本の課題"大原社会問題研究所雑誌. 532号. 1-26 (2003)

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公開日: 2004-04-07   更新日: 2016-04-21  

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