研究課題/領域番号 |
14530073
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
原 伸子 法政大学, 経済学部, 教授 (00136417)
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研究分担者 |
吉村 真子 法政大学, 社会学部, 教授 (80247113)
後藤 浩子 法政大学, 経済学部, 教授 (40328901)
山本 真鳥 法政大学, 経済学部, 教授 (20174815)
溝口 由己 新潟大学, 経済学部, 助教授
山森 亮 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (90325994)
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キーワード | 比較福祉エジューム / 市場 / 家族(世帯) / ケア / ジェンダー統計 / ジェンダー・バジェット / 一人親 / 社会的効率性 |
研究概要 |
今年度、8回の研究会(法政大学比較経済研究所「ジェンダー」プロジェクトと共催)と、海外聞き取り調査(イギリス、アイルランド、中国)および国内聞き取り調査(京都大学、龍谷大学、福井県立大学など)を行った。また「国際フェミニスト経済学会(International Association For Feminist Economics)」との連携の下、「フェミニスト経済学日本フォーラム」設立に向けての活動に参加した。(原伸子・山森亮はフォーラム世話人・幹事。第1回シンポジウムは2004年4月17日法政大学にて比較経済研究所との共催で開催。)以下、今年度の成果のいくつかを記す。 (1)福祉国家におけるジェンダー政策(ジェンダー・メインストリーミング)に関して。 (1)イギリスおよびアイルランド EUでは2000年のリスボン・サミットにおいて、ジェンダー・メインストリーミングを明言した。それは政策のあらゆる部門におけるジェンダー視点の導入という観点である。EUを構成する各国では雇用政策と家族政策の連携がとられ、労働力の女性化が推進されている。しかし、ルクセンブルク・インカムスタディ(ジェンダー統計)に明らかなように、マクロ的指標の改善にもかかわらず、シングルマザーを中心とした貧困層の拡大と、所得格差が拡大している。イギリス、アイルランドはその典型といわれている。その理由として考えられるのは、EUの雇用政策が強制力をもっていないという政策的問題は別として、福祉国家の(80年代以降推進されている)ワーク・フェア政策と、各国の構造的問題があげられる。前年度のオランダの調査にさいしてもマクロ的パフォーマンスの良好さとの対比が著しい。福祉国家のミクロ的分析が必要とされる所以である。 (2)中国 1992年以降の市場化のもと、男女賃金格差が急速な勢いで進んでいる。溝口由己の社会科学院の聞き取り調査や、北京市の幼稚園・コミュニティの調査にもとづけば、中国はシンガポールのようなコミュニティを温存させた形ではなく、アングロ・サクソン型の自由主義的福祉レジュームにすすむ勢いである。 (2)新たな理論研究・実証研究の必要性 (1)比較福祉国家論から比較福祉レジューム論へ。グローバリゼーションのもと、福祉国家の研究は、国家による福祉、市場による福祉、家族による福祉のミックスでとらえざるをえないのではないか。 (2)ジェンダー・バジェット研究 福祉国家とジェンダーという観点で実証的に必要とされるのは、マクロ経済のジェンダー化をめざすジェンダー予算確立への動きである。これはジェンダー統計の整備と、理論的にはケアの経済学の確立と連携するものである。
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