日独の短時間労働の比較研究によって、我が国の短時間労働のあり方を検討するとともに、女性労働者の就業継続、就業継続支援策としての短時間労働の可能性と課題を明らかにすることを目的に研究を行つている。 平成14年度は日本の正規就業に関するマクロ動向分析、ならびに生活時間構造のマクロ分析を中心に研究を進め、併せて、ドイツのマクロ動向に関する資料の収集に努めた。日本においては、既にミクロデータによる出産前後の就業選択分析において、出産前に非正規就業に従事していると、その殆どが出産を機に非労働力化することが明らかになっている。今回のマクロ動向分析によって、未婚女性の正規就業率が低下傾向にあることが明らかになった。晩婚化が進むなかで未婚女性の非正規化が進展することの影響は注視する必要がある。育児休業制度を初めとする現在の就業継続支援策は、正規就業者を対象として展開されており、結婚以前の非正規就業の進展は、全体としてみた政策効果を減じる可能性を持っているからである。こうした就業動向のマクロ分析とともに実施した、男性労働者も含む生活時間構造分析や就業時間と保育所開設時間の関連分析なども、今年度予定している短時間労働そのものの分析に際して背景要因を押さえる意味で有益であった 平成15年度はドイツのマクロ動向分析と日独のミクロデータ分析によって、短時間労働が女性のキャリア形成と家族形成に果たしている役割を明らかにし、社会保障や税制、保育などの諸制度の影響を2国間比較から抽出できるよう努めたい。
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