日本とドイツの短時間労働の比較研究によって、我が国の短時間労働のあり方を検討するとともに、女性労働者の就業継続・就業継続支援策としての短時間労働の可能性と課題を明らかにすることを目的に研究を進めた。 日独の雇用労働を正規就業者の週間就業時間から見ると、ドイツではフルタイム労働者の平均週当たり労働時間は42.5時間であるのにたいして、日本では年間250日以上働く雇用労働者のうち週43時間以上働く労働者は73%を占めるし、60時間以上という長時間労働者も2割以上見られる。フルタイム労働者の就業時間の違いは日独間で「短時間労働」の意味合いがそもそも大きく異なることを意味する。昨年度の研究の中で明らかになった未婚女性の正規就業率の低下傾向の中に、自発的な要因があるのか、また、あるとしたらそれはどのようなものであるかを明らかにすることは、日本における「短時間労働」の意味合いを考察する上で欠かせないと考え、平成15年度は、当初計画していなかった失業者の聞き取り調査を行った。聞き取り調査結果によれば、若年の正規就業からの自発的な退職者の多くが退職理由として挙げた項目に「長時間労働」があった。若年女性には「次の仕事は正社員でなくても良い」とする者も多いが、労働時間に関しては特に「短時間」を希望しているのではなく、「定時に帰れれば正社員でも良い」が、体験から「正社員だと定時に帰れない」と考えていた。 日本においては「パートタイマー」は、必ずしも「短時間労働者」を意味しない。女性のキャリア形成と家族形成を考えるには、日本では「短時間労働」の議論より前に、「正社員の働き方」に関する議論が必要とされているのかも知れない。
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