本研究計画は、次の4段階で行われている。(1)資料の調査・収集、(2)収集した資料の目録、簡単な解題の作成、(3)資料のデータベースの作成、(4)資料の分析。研究計画の2年目の平成15年度は昨年度に引き続き(1)〜(3)の段階を平行して行った。(1)の資料の調査・収集は平成15年8月から10月の2ヶ月文部科学省の短期在外研修で海外研修を行う機会があったため、主に国内の大学・研究機関において調査・収集に努めた。具体的には大分大学の戦前の日本の諸機関による調査資料、東京大学東洋文化研究所、国立国会図書館、東洋文庫、筑波大学の土地文書資料である。特に東洋文化研究所、国会図書館、東洋文庫では、呉県旧太湖庁の民国時期の賦税帳簿を調査し、これら3機関の資料は同種のものであり、何らかの理由で3機関に分散所蔵されていることが明らかになり、3機関の資料を時系列的ならべ総合的に分析することで土地所有の変化を考察することも可能になると思われる。平均200丁もの簿冊が全部で250冊以上にもなり、収集方法については今後検討を要する。(2)の目録・解題については、筑波大学収蔵の資料のうち土地契約文書・魚鱗冊について「筑波大学収蔵の旧東亜研究所第六調査委員会収集文書について(1)」として公刊した。江蘇省揚州府江都県の漕糧串票及び礼部官地関係部分については、平成16年9月に公刊予定である。(3)のデータベースの作成は、主に台湾中央研究院近代史研究所収蔵の導淮委員会関係の地籍簿のデータ入力を研究補助員の助力を得て行っている。江蘇省淮河流域の銅山・阜寧・泗陽等の県の地籍簿で他の調査資料等と対照し分析することで、この地域の土地関係を明らかにする一助となることが期待できる。また近年公刊された中国の農村関係の図書及び南京国民政府関係の資料を購入し分析の助けとした。
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