研究概要 |
本年は本研究の初年度であり,1998年以降の企業合同(「スーパー・メジャーズ」の形成)の先鞭をつけたBP社,および「スーパー・メジャーズ」の中で最大企業の位置にあるエクソン・モービル社を対象として,基本資料の収集と分析を行った。その結果,以下の諸点を主たる要点として挙げることが出来る。 (1)BP社とアモコ・アルコ両社との合同(BPp.1.c.の形成),およびエクソン社とモービル社との合同(エクソン・モービル社の形成)の最も重要な目的は,ともに原油および天然ガスの生産事業(upstream)の強化に求めることが出来よう。 (2)BP社の場合,1990年代に入り,中東などの産油国,旧ソ連邦などが,自国の石油・天然ガス資源の開発,生産に外国資本の導入を図ったことが合同に向かう一つの大きな背景要因になったと考えられる。国際石油資本の中では企業規模等で中位・下位に属した同社は,他社との合同によって事業規模,資金力などを一挙に拡充し,これら地域での利権(鉱区)獲得競争に応える主体的な条件の強化を図ったのである。 (3)1990年代初頭頃から,油田・天然ガス田の探索,開発,生産に技術面で大きな飛躍があり,国際石油資本にとって,鉱区の選択的な取得と活用が戦略的な重要性を獲得したことである。BP,エクソン両社は,鉱区の将来性,採算性に対する科学的な評価能力の向上を踏まえて,将来性の低い既存の鉱区を大胆に処分する一方,他社との合同によってより有望な鉱区の取得を図ったのである。 (4)1990年代末以降ほぼ同時期に大規模合同が展開した自動車産業,鉄鋼業,金融業などと同様に石油産業の場合も,事業の相互補完の実現,相乗効果(シナジー)の追求などが合同を促す共通要因となった。経済のグローバル化と世界的な規模での競争の深化が、従来の単独での活動に転機を促したものと思われる。
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