研究概要 |
本年度は,まず,6月25日にイギリス経営史学会・全国大会(ノッティンガム大学)において"Standard Oil Company(New Jersey)in the U.K.market from the end of World War II through to the end of the 1960s"を報告し,第2次大戦終了以降1960年代末までのイギリスにおけるニュージャージー・スタンダード石油会社(1972年末以降エクソン社,1999年末以降はエクソンモービル社)の活動を検討した。その主たる要点は,第1に,同社の在英子会社エッソ石油による戦後活動の主要な特質の一つが,石油製品の流通機構の再編成・刷新にあったこと,第2に,1960年代半ばまでエッソ石油が発電用重油の最大の販売企業と考えられ,如上の流通機構の改革がその優位性を支えた要因の一つであったこと,である。 次に,1990年代初頭から今日までのエクソン社(エクソンモービル社)の原油と天然ガスの生産事業を分析した。その要点は以下の通り。第1に,90年代初頭における同社の主要な生産拠点は北アメリカとヨーロッパであり,これが今日においてもなお基本的に維持されている。第2に,しかし,90年代に旧ソ連邦,西アフリカが同社の新たな生産拠点に組み込まれ,特に後者の西アフリカ(ナイジェリア,赤道ギニアなど)での原油生産は急進展を遂げた。近い将来,西アフリカは原油ではヨーロッパ(北海)を凌ぐ拠点へ転ずるものと考えられる。第3に,これら新興の生産拠点における生産増は,1999年のモービル社の買収によって可能となった面が大きく,エクソン社はこれら地域における他の国際石油資本に対する劣勢をモービル社の買収によって打開したと考えられる。第4に,大水深海域(今日は水深500m以深)での探鉱,開発,生産の成功が90年代初頭以降の重要な特徴である。アメリカのメキシコ湾,西アフリカにおいて顕著な進展があった。
|