研究概要 |
本年度は,エクソンモービル社の原油と天然ガスの生産事業について,アメリカのメキシコ湾の大水深海域,旧ソ連邦,西アフリカ,特に後2者を対象として分析した。主たる結論は以下の通りである。 第1に,原油の生産規模からすれば,西アフリカは2003年頃までにエクソンモービル社の主たる生産拠点の一角に転じ始めた。だが,メキシコ湾の大水深海域と旧ソ連邦での活動は,同社が保有した埋蔵量からすれば生産量はいまだ小規模であり,なお発展の初期段階に留まるように思われる。 第2に,西アフリカでの探鉱,開発,生産においては,メキシコ湾で用いられた技術,操業方法などの多くがほぼそのまま利用可能だったと考えられる。これが未踏の鉱区にもかかわらず西アフリカでの油・ガス田の発見率の顕著な高さを可能にした主たる要因の一つと思われる。 第3に,旧ソ連邦での活動は,当初は既発見の油・ガス田を対象になされ,試掘などに伴う投資の危険性をできるだけ回避する方策がとられた。しかし,現地政府の政策や要求,あるいは現地政府と周辺国政府との利害対立などが油・ガス田の開発,生産を遅延させる主たる原因の一つとなった。 第4に,検討対象とした地域・海域での探鉱,開発などは多くの困難を伴い,エクソンモービル社の事業費は従来の諸地域に比べ巨額であった。費用の削減,操業効率の向上などが大きな課題であり,メキシコ湾では,複数の油・ガス田での生産をひとつのプラットフォームで対応する,西アフリカではEPSとして知られる早期生産方式を導入する,などの多様な試みが追求された。 第5に,モービル社の買収によって,エクソン社は,これらの地域・海域で先行した有力国際石油企業群への急追を可能にした。メキシコ湾最大の油・ガス田たるサンダー・ホース,カザフスタンのテンギス油田,西アフリカのアルジェリア沖油田,などに対するモービル社の権益の継承とその活用が同社の地歩を強化したのである。
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