研究概要 |
本研究は,世界石油産業の現段階の構造と特質を探ることを目標として,そのための作業の一部を試みた。検討対象,分析範囲等を大きく限定し,スーパー・メジャーズとして最大企業のエクソンモービル社を対象として,1990年代初頭から2003年末までのアメリカのメキシコ湾の大水深海域,旧ソ連邦諸国,西アフリカにおける原油と天然ガスの生産活動を考察した。研究から得られた結論は以下の通り。 第1に,これら新規進出の地域・海域での活動は,2003年までには原油の生産に結実した。エクソンモービル社の今後の生産を持続可能とするひとつの基本条件を構成したと考えられる。 第2に,大水深と呼ばれた深海域での活動は,1990年代初頭頃からの原油と天然ガスの探鉱,開発技術などの飛躍的な発展に支えられ,かつこれと相伴って進展した。 第3に,旧ソ連邦での活動は,油・ガス田の存在がすでに明らかな地域・海域を対象として事業を開始することで試掘に伴うリスクの回避を図った。 第4に,西アフリカは,カスピ海とその周辺域とともにやがて北海に代替するヨーロッパ市場向けの有力生産拠点として位置づけられており,2003年頃までにはこれに応える成果が見られた。 第5に,本研究が対象とした諸地域・海域は,巨額の事業費を要した。エクソンモービルは費用の削減,投資の回収にむけて多くの努力や工夫を試みた。 最後に,エクソン社にとってモービル社を買収したことが,これら新開地域・海域での活動を飛躍させる契機となった。
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