研究課題
本年度は1950年代の地域史を明らかにするために、岩手、長野、神奈川と3県地域を比較しながら資料調査を行った。第一は岩手南部調査である。4月2日〜4日、9月9日〜12日まで、岩手県紫波郡紫波町を対象として調査を行った。紫波町では志和農協と熊谷久家を中心にして資料目録の作成を行った。また、熊谷家資料とは、志和農協組合長としてリーダーシップをとった人物の所蔵資料であり、その資料を整理した。とりわけ、志和農協資料は戦後改革から高度成長期にかけて良質の資料が残されていた。志和村は戦後高度成長期に「志和型複合経営」として、全国に名を知られるほどの農業経営の先駆的モデルとして評価された地域である。今年度は、志和農協の資料整理を完成した。第二は、長野県飯田市調査である。2003年8月5日〜7日まで飯田市地域史研究事業準備室の調査を行った。飯田市域を中心とする下伊那地方の1950年代の資料残存状況を確認するため、在来産業(製糸業)、農業、都市計画、青年、婦人、教育の分野ごとに資料を確認して目録を作成した。第三は、神奈川県小田原市調査である。2004年3月1日〜3日まで小田原市史編纂室の調査を行った。ここでも1950年代の地域史の全体像を知るために、労働運動、農業、青年、都市計画、福祉などを中心に資料確認を行った。また、戦後から高度成長期にかけての農業改良普及員の所蔵資料を発見できたことは大きな成果であった。以上のように、東北辺境地域(岩手南部)、中部養蚕地域(下伊那)、京浜工業隣接地域(小田原)と異なる地域を対象として調査し、1950年代地域史の比較史的検討を行うための基礎的な史料確認が本年度の成果である。
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