研究課題
本年度は1950年代の地域史を明らかにするために、長野県飯田市と神奈川県小田原市に対象を絞りながら、資料調査を継続した。飯田市調査では、8月10日から12日まで飯田市歴史研究所の所蔵資料について天龍社関係を中心に調査した。また今回の調査では、周辺農村部の飯田支所に保存されている役場文書の資料確認を行った。山本、三穂、下久堅の各支所の保管文書を調べた。飯田市周辺農村の資料残存状況は大変すばらしいもので、今後の研究対象として有望な地域であることが改めて確認された。飯田調査では、下久堅の青島直人家の調査を行った。青島家は戦前、青年団長をとして村の下久堅時報発行に係わり、戦後養蚕農協の設立に係わった有力な農村指導者である。資料としても戦後養蚕農協関係の資料が保存されており有益な調査であった。小田原市調査では、4月から5月にかけて二見重雄家文書を調査した。二見重雄氏は戦後小田原市の農業改良普及所長、根府川柑橘試験場長を勤めた方で、小田原ミカン関係、県農政部関係の貴重な冊子、刊行物を保存されていた。われわれは、このダンボール50箱に相当する資料を、半年かけて整理して資料目録を作成した。2004年9月6日から8日まで小田原市調査を行った。おもに市立図書館の所蔵資料を調査した。小田原地区労情報ニュース、小田原商工綴、戦争直後の小田原の地域新聞など、かなり良質の未整理資料が保管されていることがわかった。小田原調査では、山北の池谷嘉徳氏の聞き取りを行った。池谷氏は戦後開拓農家の指導に当たった方で小田原の和留沢開拓にも関与された。戦後開拓の困難さを知ることができた。以上のように、本年度は、中部養蚕地域(飯田市)と京浜工業地帯隣接地域(小田原市)を比較しながら、1950年代の地域社会の変貌を調査した。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
日本の時代史26戦後改革と逆コース(吉田裕編)(吉川弘文館)
ページ: 185-227
占領とデモクラシーの同時代史(同時代史学会編)(日本経済評論社)
ページ: 5-33
一橋論叢 13l・6
ページ: 705-716