研究課題
平成17年度は科研費助成の最終年度として、1950年代の地域史のまとめに入った。これまでの調査地域のなかで、京浜工業地帯に隣接し、50年代の地域的変貌のもっとも著しい神奈川県小田原地域に焦点を絞った。5月9日に小田原地域の戦時下から戦後にかけて最大の誘致工場であった冨士フィルム写真工業株式会社を調査した。本工場の南足柄市の足柄工場と分工場の小田原工場の二つを対象として、労働運動史料を収集した。とりわけ冨士フィルム労組の機関誌、職場新聞の収集につとめた。8月4〜6日には小田原調査として、ミカン作として根府川園芸試験場、小田原市立図書館、市役所文書を中心に集中的に各分野の史料収集に当った。12月19日には、冨士フィルムの元労働者で労働組合指導者であった横山富雄氏の聞き取りを行った。1950年代の冨士フィルム労組の活動内容と小田原地区労の関係を知ることができた興味深い内容であった。翌2006年2月17日〜18日に2日間の総括研究会を開催した。ここでは、小田原地区を対象として、1950年代の急速な開発による工業化・都市化のなかで変貌する地域社会を、工場誘致、近郊農業(ミカン)の発展、農村再編、漁村の変化、青少年問題、学校教育、観光・文化、行財政の多面的な視点から、明らかにすることが目標となった。これまでの結果、1950年代の地域社会の特徴として、戦後改革期とも高度成長期とも異なる固有の歴史性をもつ時代であり、自立性と多様性、そして可能性をもった時代であることが分かった。これらを4月にはまとめることよって、小田原地域を対象として1950年代地域史の総合的研究を達成したい。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
一橋大学研究年報経済学研究 47号
ページ: 3-82
社会科学論集(埼玉大学経済学会) 第116号
ページ: 1-21