研究課題
基盤研究(C)
対象調査地域を、京浜工業地帯に隣接し、1950年代の地域的変貌のもっとも著しい神奈川県小田原地域に焦点を絞った。小田原地区を対象として、1950年代の急速な開発による工業化・都市化のなかで変貌する地域社会を、工場誘致、近郊農業(ミカン)の発展、農村再編、漁村の変化、青少年問題、学校教育、観光・文化、行財政の多面的な視点から、明らかにすることを目標とした。このため、工業化の事例として、小田原地域の戦時下から戦後にかけて最大の誘致工場であった冨士フィルム写真工業株式会社を調査した。本工場の南足柄市の足柄工場と分工場の小田原工場の二つを対象として、労働運動史料を収集した。とりわけ冨士フィルム労組の機関誌、職場新聞の収集につとめた。また、近郊農業の変貌の事例として、小田原地域のミカン作の隆盛を対象として、根府川園芸試験場、小田原市立図書館、市役所文書を中心に集中的に各分野の史料収集に当った。以上の結果、1950年代の地域社会の特徴として、戦後改革期とも高度成長期とも異なる固有の歴史性をもつ時代であり、自立性と多様性、そして可能性をもった時代であることが分かった。具体的には、戦後改革による経済制度改革を前提に、1949年のドッジラインを契機に1950年代に急速な工業化と農業の発展によって、地域社会は大きな変貌を遂げる。小田原地方では、1950年代に大企業の工場誘致とミカン作を中心とした商業的農業の成長によって、地域社会は大きく変わり、地域の自律性とともに、外部資本による地域の包摂が同時進行する。地方都市、農村・漁村社会、青少年、教育、観光の諸局面において小田原地方を事例として検証した。そのような意味で1950年代を地域の多様な可能性をもった固有の歴史的時代として位置づける必要があろう。
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