研究概要 |
第二次大戦中の「ポンド残高」累積期から1972年の変動相場制への移行・74年の第二次バーゼル協定の廃止までを対象として、ポンドが基軸通貨性を喪失じてゆく過程の実証的解明に取り組んだ。 本年度はまず,(1)第二次大戦勃発に伴うポンドの為替管理開始=「スターリング地域」の成立、(2)その下での「ポンド残高」の膨張、(3)45年英米金融協定の締結、(4)47年ポンド交換性回復の挫折、(5)為替管理復帰による「スターリング地域」維持政策、の5点を中心に、イギリス大蔵省およびイングランド銀行の内部資料を調査し、各時点における当局の状況認識と政策構想あるいは対応を検討した。そして、当局は、戦後に国際収支上の困難が生じることを十分認識しておりながら、ポンド相場下落を避けつつ戦争遂行に必要な対外支払いを継続するために「ポンド残高」累積を容認せざるをえなかった、ということを確認した。また、戦後も「スターリング地域」を維持しつつ(つまり為替管理を継続しつつ)「ポンド残高」の削減を図ることを目論んでいたが、当面の国際収支対策上はアメリカの援助が不可欠であったため、アメリカの「スターリング地域」解体要求に応えてポンド交換性回復に踏み切らざるをえなかった、ということも確認できた。 以上の認識・構想を実際に進行した事態と照合し、両者間の相即あるいは齟齬を検出することによって、両者間の屈折した関連を解明することが次の課題であるが、その点については、着手はしたものの未だ具体的に成果を示しうる段階には至っていない。次年度にまとめることになる。
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