本年度は、当該研究課題に係る研究期間(3ヵ年度)の初年度にあたり、研究課題にかかわる基礎的データの収集、および基盤的な論点の整理に努めた。その概要は以下の通りである。 (1)国際決済銀行の歴史研究にとりくむに際して、同行の政策展開をひろく20世紀の中央銀行史に位置づけた仏語論文を執筆した。 (2)さらに、いわゆるネオ・リベラリズムの政策理念と国際決済銀行との関連をあきらかにする構想に想到し、この視点から「ユーロ・カレンシー市場と国際決済銀行」と題する学会報告を、今年度の土地制度史学会秋季大会(於千葉大学)にておこなった。この報告は、パネル・ディスカッション「ネオ・リベラリズムと戦後資本主義」の一環として構成され、学会における活発な論議をみちびいた。 (3)夏季には、イングランド銀行・フランス銀行等に出張し、現地の史料を収集した。ここで収集した史料からは、これまで解明されていなかった史実も発見され、来年度以降の研究展開に大きく資することとなった。 (4)さらに、各国の国際銀行業史の側面から、国際決済銀行、ならびに国際通貨・金融システムの構造を把握することをこころみて、フランスにおける国際銀行業史を回顧し、論点整理をおこなった。その成果は、今年度の日仏経営学会大会(於関西学院大学)にて報告され、その概要は同学会誌に掲載が予定されている。
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