本年度は、研究のまとめの年として、昨年までの研究の発表に向けて整理を行い、不足点の追加、一部の発表の準備を行なった。本年度末までには公表できなかったが、成果として、以下の2点がある。 「第2次世界大戦、そして現在」と題する第2次世界大戦から現在に至るイギリス女性の歴史を概観する章を今井けい・河村貞江編『イギリス近現代女性史研究入門』(青木書店・2006年出版予定、初校済み)に執筆した。ここでは、現代イギリス女性史を理解するうえにはマイノリティ女性の歴史の把握は欠かせないとい立場に立ち、第2次世界大戦中のアイルランド女性のブリテンへの移住、1940年代後半のEuropean Voluntary Workers、1950年代以降の植民地からの女性の移住について触れた。特に、現代のイギリスのマイノリティ女性の状況を2001年センサスや近年のイギリス政府の報告書、ニュースなどを利用して概説し、イギリス社会におけるジェンダーのあり方はエスニック・グループによって異なるとともに、エスニック・グループ相互の社会経済関係に規定されることを示した。 2006年9月にロンドンにおいて第5回Anglo-Japanese Conference of Historiansが開催されるが、その場において、"Women Immigrants for Domestic Staff in Hospital-Gender and Ethnicity in Labour Market in the mid-Twentieth Century-"と題した報告を行なうことが、05年5月に受理された。その報告に向けて、病院などにおける家事スタッフに着目し、女性の未熟練労働と見なされ、戦後深刻な労働力不足にことを指摘し、この職をめぐる3つのエスニック・グループ、すなわち、アイルランド系、東欧からの難民、アフロ・カリビアン相互関連を分析した報告原稿を作成中である。なおこの概要は、17年9月に、イギリス近現代社会史の研究者による小規模な研究会で報告した。
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