研究課題
基盤研究(C)
本研究の特徴は、特定のマイノリティ・グループに焦点をあてるのではなく、マジョリティとマイノリティとの関係、複数のマイノリティ・グループの相互関係を検討することである。第2次大戦中から戦後にかけて約10年の問に、病院家事労働者不足に対応するために英国政府が主導して、アイルランド人女性、中東欧出身の難民を導入し、さらに政府の意図とは別に植民地出身の女性が40年代末から英国に渡ってきた。研究の焦点をここに当て、政策およびエスニック・グループの相互関係を中心に研究を行なった。研究の得られた知見は以下の5点である。1.第二次世界大戦末期から伝統的な女性労働分野(家事労働・繊維工業)における深刻な女性動力の不足と出生率低下・人口減少への懸念は、1945年以降、外国人労働力の組織的導入政策に密接に結びついた。2.第二次世界大戦後の英国は女性労働力の深刻な不足に悩みながらも、マジョリティ女性については、家内的存在として、「伝統的」性的役割分担を強化しようとしていた。3.マイノリティ女性は、労働力として位置づけられた。政府は、アイルランド人および中東欧難民については、「統制可能性」「扶養家族の有無」など英国社会の利益に従って導入しようとしたが、必ずしも成功しなかった。4.植民地からのカラード女性を英国本国に導入することは政府レヴェルでは全く考慮されず、植民地からの要求を拒否し、省庁間の対立があった。植民地からの(自主的)移民の増加とともに対処を余儀なくされた。他から労働力が十分に得られない病院家事労働者へ「カラード」女性の導入が進んだ。5.政府には、ジェンダーおよびエスニシティの観点から労働者について明確なpreferenceがあり、より望ましい労働力から導入しようとする。逆に政府(社会)によってless preferableとされた労働力が、条件の悪い職に集中する過程を具体的に示すことができた。
すべて 2005 2003
すべて 雑誌論文 (8件)
経済論集(大東文化大学) 84集(今井けい教授定年退職記念号)
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史学雑誌 第114編第5号
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State and Empire in British History : Proceedings of the Fourth Anglo-Japanese Conference of Historians
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Journal of Humanities and Social Sciences, Nagoya City University Vol.15