本年度は当研究の最終年度にあたるため、データ分析・論文作成を中心におこなったが、新たに重要なデータが見つかったため、そのデータ入力作業も並行して実施した。すなわち研究代表者が、平成16年10月より17年3月末まで、一橋大学経済研究所に内地留学したため、一橋大学附属図書館に保存されている『日本紳士録』や『銀行会社要録』より、分析上必要なデータを新たに入手することが可能となった。 分析作業については、資産保全会社を全国より上位200社抽出した上で、年次別・地域別の設立傾向を検討した。また資産保全会社の出資者等(同族団員)の特性を、1集団当り同族団員数、出資者数、事業開始後の世代数(つまり事業歴)、資本金額、代表者の事業継承方法などのデータから検討した。資産保全会社への個人別出資比率の水準を、当時の家族法制に準拠しつつ代表者との続柄別に分析した結果、その水準が資産保全会社等での役職、続柄等によって決定されていることを回帰分析によって検証した。あわせて個人別の第三種所得が、資産保全会社への出資額、資産保全会社・中核的な事業会社の役職などによって決定されていたことを回帰分析で検討した。以上の検討結果より、戦前期における資産保全会社の同族団員は、当時の所得税法や家族法等の与件のもとで、組織的か所得稼得・資産継承等の経済行動を採用していた。すなわち戦前期における高額所得者は、家族ではなく同族団といった擬制な経済主体(いわば同族経済)を単位としつつ経済行動をおこなっていたことを明らかにした。 以上
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